渡部 真人 院長(おひさまげんきクリニック)のインタビュー

おひさまげんきクリニック 渡部 真人 院長

おひさまげんきクリニック 渡部 真人 院長 MASATO WATANABE

千葉県出身。帝京大学医学部卒業後、帝京大学医学部附属溝口病院外科に入局。神奈川県立がんセンター、高津駅前クリニックなどの勤務を経て、2022年に高津駅前におひさまげんきクリニックを開院。溝口病院と密な連携を取りながら、外来と訪問診療の両方に力を入れている。

急性期後の患者様を診るために

実家が整形外科の診療所だったので、医師を目指したのは自然な流れでした。帝京大学医学部を卒業した後は、そのまま附属の溝口病院で初期研修を経て入局しました。外科を目指すきっかけになったのは、初期研修の時にお世話になった先生との出会いです。患者様に対してとても誠実な方で、その人柄に惚れました。外科医になった後、長らく溝口病院に勤めていましたが、医療を取り巻く時代の流れとでも言いますか、大学病院内で治療を完遂することが少なくなってきました。大学病院は主に専門的あるいは急性期の治療を担うのが役割。病状がある程度落ち着いた後は、開業医に診てもらうのが一般的な流れになります。しかし、がんなどの大きな病気というのは、急性期を脱した後の治療の方が長くなることが多いのです。例えば私が手術を担当したり抗がん剤を受けていた患者様が、しばらく後に亡くなったという知らせを受けても、どのような経過を辿ったのか、天寿を全うできたのかどうかを知ることができず、歯痒い思いをすることが何度かありました。このような経験から、大学病院では難しくなってきた急性期後の患者様を診たいと考えるようになり、開業に至りました。

溝口病院との密接な連携が強み

おひさまげんきクリニックの患者様は、多くが溝口病院からの紹介になります。その中には、専門的な治療を終えて病状が落ち着いた後、「今後は開業医にかかってください」と言われて不安になってしまう患者様もいます。そのような時でも「元々は溝口病院で勤めていた先生だから大丈夫。具合が悪くなったらこちらで診ることもできるから」と紹介されれば安心感が違いますよね。当院は外来診療と訪問診療を掲げていますが、私が訪問診療で外出している時、ここの外来は溝口病院の先生に受け持っていただいています。内科、外科、循環器、呼吸器の医師が入れ替わりで診ているので、クリニックとしては呼吸器内科を標榜していますが、幅広い病気に対応できます。私のスタンスとしては、自分だけで患者様の病気を抱え込むつもりはありません。調子が悪くて当院へいらっしゃった方でも、一回詳しく調べた方がいいと判断したら、すぐに溝口病院につなぎます。そして溝口病院で専門的な治療を終えて落ち着いた後は、またこちらに戻っていただき診療を担当させていただきます。例えるなら溝口病院の一診療室というイメージかもしれません。

最期までより良く生きるための訪問診療

訪問診療の患者様に関しては、溝口病院ではこれ以上治療をすることができないという方がほとんど。そのうちの半分は病状や体力的にも通院が困難な方、もう半分は残る時間を自宅で過ごしたいと希望される方でしょうか。訪問診療は、治療よりも養療とよく言われます。患者様の体の状態と周りの生活環境を把握して、より良く整えていくのが一番の目的です。それには医師だけではなく、看護師やケアマネージャーの力も必要です。そして病院とは違った視点で患者様を診て、病気そのものを治すことよりも、患者様の体力を回復させて「元気」になる方法を探ります。投薬はもちろん、移動を助ける機器の提案や、生活の中に取り入れると良いことのアドバイスなども行います。残る時間をご自宅で、とお考えの方には、最後まで好きなものが食べられて、色々な人に囲まれながら過ごしてもらいたいというのが私の願い。それまで治療を頑張ってきたのだから、もう無理をしなくてもいいよ、好きなものを我慢する必要もないよ、痛みや辛さに関しても心配しなくていいよ、と。そんな思いで患者様と接しています。そしてご家族にも「本人の希望通りに家で過ごさせてあげられた」という満足感を持っていただきたい。ご本人にもご家族にも納得のいく最後をつくるのが訪問診療医としての私の役目だと思っています。

QOLを含めた「元気」を目指す

開業して感じていることは、大学病院と違って答えが出しづらいということです。先ほど「訪問診療は治療よりも養療」とお話ししましたが、大学病院でやるのは治療なんです。例えば検査をして、ある値が出たとします。大学病院では、「その値の時はこの薬」と決まっています。ところが患者様の年齢や体力、場合によっては性格なども考慮した「養療」を目的にすると、視点が全く変わってくるのです。病院と変わらない治療を自宅でも受けられることを目指すのか、あるいは病院とは違う形で患者様と関わることをコンセプトにするのか。これは訪問診療を行う医師によって意見が別れるところですが、私の場合は後者なんです。病気の完治や検査の値を正常にするために、体力的にも年齢的にも負担の大きな治療を行うよりも、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を含めた「元気」を目指す。その方が大事かなと、私は思っています。

地域の皆さんと大学病院の架け橋に

「おひさまげんきクリニック」という名前は、家族会議で10歳の娘が考えたものです。患者様に「元気」になってほしいという私が考えていたクリニックのコンセプトに合っていて、いいなと感じました。「おひさま」という言葉には、笑顔でいてほしいという気持ちも込められています。医師としてこの地域に暮らして15年以上が経ちました。歴史が古く昔からの商店も多く残っている街です。適度に騒がしくて、気楽で、人情味がある。そんなところが好きですね。近年は開発の波が少しずつ押し寄せてきて、街にも変化を感じます。それによって今まで通りの暮らしをしにくく感じている方も出てきているようです。医療に関してだけ言えば、馴染みにしていた溝口病院に行きにくくなり、どうしたらいいか分からないという声も聞きます。そんなちょっと敷居が高くなってしまった溝口病院と高津区界隈の人たちとの架け橋になれたらいいと思っています。どんな小さなことでも、困ったときはぜひお話しに来てください。

※上記記事は2022年11月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

おひさまげんきクリニック 渡部 真人 院長

おひさまげんきクリニック渡部 真人 院長 MASATO WATANABE

おひさまげんきクリニック 渡部 真人 院長 MASATO WATANABE

  • 出身地: 千葉県
  • 趣味: 料理器材の手入れ
  • 好きな本: 漫画 湾岸ミッドナイト
  • 好きな映画: スターウォーズ
  • 好きな言葉: 誰にでもできることでも、誰にもできないことがある
  • 好きな音楽: 80年代のバンド音楽
  • 好きな場所: 首都高速(景色を見ながらドライブ)

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