かわさき もみの木動物病院 伊地知 功史 院長 KATSUSHI IJICHI
大学卒業後、研究職を経て臨床医に。千葉県内の動物病院で経験を積み、「梶が谷駅」そばに開業。
大学卒業後、研究職を経て臨床医に。千葉県内の動物病院で経験を積み、「梶が谷駅」そばに開業。
ベースとしてあったのは、中学生のとき読んだ畑正憲氏のエッセイです。特に「ムツゴロウの少年期」「ムツゴロウの放浪記」などの青春記が面白く、こんな風に生きられたらいいなと思っていました。そして高校3年の夏、いよいよ進路を決める際に獣医師という選択肢があることを思いつき、志望しました。もともと昔から家で動物は飼っていたので、なじみもあったのだと思います。当時は何となく研究職に就きたいという漠然とした気持ちがあったのですが、結果的に獣医学という実学を選ぶ事にしました。しかし、大学を卒業し研究職か臨床かを選択する際、やはり憧れであった研究職に進みました。
その後、研究職を辞めて臨床に進んだ理由は2つあります。1つは臨床と研究職とを両立していらっしゃる優秀な医師にお会いしたことです。医学部の場合は教育システム上、研究職に進む人も臨床を経なければならないのですが、獣医学部では卒業時に研究か臨床かで分れます。ですので、研究職に進む場合は臨床の経験をしないまま進むのが通例です。基礎研究もしながら臨床もこなす医師にお会いして、自分もきちんと臨床を勉強したいと思いました。
もう1つは獣医師免許を持っているわたしが、実験動物のマウスを消耗品として扱わねばならなかったことです。マウスにはさまざまな薬品を投与し、その中で生き残る個体がどれだけいるかを実験するわけですが、生き残ったマウスも死んでしまったマウス同様、処分しなければなりません。動物を救うために取得した免許で、動物を殺すことになるとは思わなかったのです。
その後独立するために勤務医として千葉県市川市の動物病院で働きました。さらに臨床の勉強を続けたかったので開業地は色々なセミナーに参加しやすい関東エリアから探しました。今、病院のある場所は、交通の便がよく、どこにも気軽に行けるので助かっています。
よく「人間の食べるものを与えないように」とおっしゃる方がいますが、わたしは「ヒトが食べるものは基本的には安全である」と考えます。塩分の問題や特定の食物アレルギーがよく議論されますが、わたしはむしろ、ペットフードの添加物や保存料を問題視しています。当院では手作りフード、缶詰フード、ドライのペットフード、半生のペットフードをそれぞれ放置してカビの生え方を調べましたが、手作り→缶詰→ドライの順でカビが生え、最後まで何も起こらなかったのが半生タイプのフードでした。半生タイプはそれだけ不自然なフードだと言う事です。塩分についてですが、ヒトが普通に食事で食べているものであれば大丈夫です。明らかにヒトも病気になるような高濃度のものはいけません。塩分は身体に必要ですが、どんなに身体に良い物でも取りすぎると良くありません。
また、注意すべき食物でよく取り上げられる「たまねぎ中毒」についてですが、むかしはたまねぎ入りのカレーライスやハンバーグの残りを与えていた家庭があり、食べても平気な犬がいたはずです。「たまねぎ中毒」には、罹患する遺伝子を持つ個体と持たない個体とがいるのです。わざわざそれを調べるよりも、出来るだけのリスクを避けるためにもたまねぎは与えないほうがよいでしょう。当院では使ってよい食材とその調理法をレクチャーしていますので、手作りのフードを与えることを是非お考えいただきたいと思います。ペットフードは便利ですので選択肢のひとつにはなりますが、出来るだけ品質の良いフードを与えて下さい。ネコは特に食に保守的な動物ですので、一度ペットフードに慣れると手作りの食事はなかなか口にしませんが、根気よく試してみてください。そのためのご指導もさせて頂きます。
「行動療法」とは、動物の問題行動を獣医師側のアプローチで矯正していく治療法で、学問としては10年くらいの新しい専門分野です。具体的には、病的に問題行動を起こす動物にメンタルケアを施して飼い主さんとの関係を改善したり、人間との共同生活に順応させるようにします。時には、サプリメントなども使用します。問題行動の難しい点は、「問題」を飼い主さんが問題視していないことでもあるため、飼い主さんのカウンセリングも一緒に行います。問題行動の矯正はトレーナーさんも行いますが、それぞれやり方が異なるだけで目的は同じです。大きな違いは、獣医師の場合、薬を補助的に使える事でしょうか。。当院ではこうしたご相談に乗り、専門の獣医師がお世話させていただきます。
「ホメオパシー」とは「似たものが似たものを治す」と言う考えに基づいた治療法です。基本的には病気の動物が自分で治ろうとする力をサポートします。落ち着きがない、ヒトと信頼関係が築けない、不安気味…といった動物にはメンタル面でもケアをします。メンタルは非常に大事で、精神的なストレスがあると免疫力が下がるのです。先にお話した「行動療法」とは補完関係にあり、それぞれが足りない部分を補い合い、動物が自分で治る力を高めることを目的としています。
診察で心がけていることは、動物の本来の治癒力を向上させ、かつ、邪魔をしないことです。薬をお出しする際も、「この薬が本当に必要なのか」を常に検討し、投薬が過剰になっていないか、適切か、考えるようにしています。また、ペットとのコミュニケーションに不安を感じていらっしゃる方は、お気軽に当院にご相談いただいたいと思います。行動療法の専門獣医師がおりますので、カウンセリングをしながらペットとの関係を改善し、一緒に仲良く暮らしていけるよう、ご指導させて頂きます。
※上記記事は2013.12に取材したものです。
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