和田 則夫 店主（梶が谷工作倶楽部)のインタビュー

プログラムのない工作教室

「梶が谷工作倶楽部」は、プログラムのない工作教室です。ここでは子どもたちに、とにかく好きなことを極めて好きなものを作ってほしいと思っています。

基本方針は安易に「答え」を与えないこと。あくまで作るのは子どもたち。子どもが自分で決めることを大切にしています。なので、私が「こういうものを作ってみたら？」と先回りして促すようなことはしません。子どもに自ら作りたいものを見つけてもらい、その過程で「どうしたらいいんだろう」という壁にぶつかっても、自分自身でその壁を乗り越える体験をしてほしい。私は壁を乗り越えるために、少しアドバイスをするだけ。要は子どもたちに、工作を通じて気づきや発見をつかんでほしいです。

シカゴ駐在を経たデザイナーが工作教室を開くまで

もともと私はデザイナーとしてデザイン事務所に勤務していました。仕事の関係でシカゴに駐在もしましたが、体を壊したことをきっかけに事務所を移り、その後独立。本業の傍ら好きなことをしたいと思った時に、「工作」という言葉が浮かびました。ここは私の事務所でもあり、遊び場でもあります。本当はここにずっとここにいたいくらい（笑）。私にとっても居心地がいい場所なんです。

手を使って試行錯誤することは、創造性の基本だと考えています。なので、ここでは色々なものを触って認識力を高めてほしいですね。知識として理科などで出てくる「〜の法則」なんて知らなくても構わないんです。「これくらいの重さのものはこれくらいの速さで転がる」とか、体感を通じて知ってほしいと思います。たとえば、飛行機を作ったらすぐに飛ばせると思っている子がいますが、実際には風を受け止めるための羽の調整など飛ばすためには工夫が必要なんです。何度も試行錯誤しながら「こうすればうまく飛ぶ」という体験を積んでほしいと思っています。このような感覚を磨くには、とにかく手を使って遊ぶ必要があります。そのために、大人は子どもを束縛しないことが大切ですね。

手ぶらで工作が可能。材料も道具も自由に使って

道具も材料も、基本的には何も持ってくる必要はありません。針金も角材も、何でもあります。材料はここにあるものを全て使ってもらって構いません。工作に使われて材料がなくなっていくのは、私の喜びでもあります。小さな木の切れっ端からこんな物ができるんだっていう発見をしてもらいたいですね。工作物は、持ち帰って飽きたら、またここに持って来てほしいと伝えています。飾ることもできますし、分解してまた材料として使うこともできますから。

これまでに、木材で牛蛙を作ったり、ハムスターのアスレチックを作ったりなど、色々なものを作る子がいました。牛蛙を作った子が、色を決めるのに2時間半かかったなんてこともありましたが、すべてが貴重な経験だと思っています。ここでは、とにかく自分が好きなものを自由に作ってほしいですね。

大人も子どもも、さまざまな人を受け入れている

この教室は、1回2時間半が基本です。午前1回と午後2回のどこか希望する時間帯に来てもらっています。これまでに色々な子どもたちが来てくれました。不登校の子や、知能に障がいを持つ子もいました。私は、どんな子どもに対しても1対1で付き合うことを大切にしています。居心地がいいのか、時々「帰りたくない」と言う子もいますね。

子どもだけではなく、中学1年生〜大人の方も受け入れています。子どもたち同様工具類はすべて自由に使えますし、3Dプリンターやレーザーカッターも使えます。幼稚園の先生が、卒園記念の図書返却ボックスを作成された事もあります。過去には「帰宅前工作グループ」があって、大人たちが仕事帰りに工作するなんてことも。

ご近所付き合い感覚で、困りごとがあれば寄ってほしい

梶が谷工作倶楽部は、ご近所付き合いが好きなんです。実際に、この教室の前をいつも通る方が突然壊れたものを持って来て「これ直せますか？」と聞かれたこともあります（笑）。こんな相談も大歓迎です。ご近所付き合い感覚で、工作はもちろんのこと、何か困りごとがあれば気軽に寄ってほしいですね。

※上記記事は2023年5月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。