この道に至るきっかけと、これまでの経緯をお聞かせください。
建築を勉強してきて、その方面に就職する予定でいたんです。でもね、そこにギャップがあることに気づいたんですよ。当然ですけど、建物を造るということは、クライアントさんがいて、その意向に添っていきながらベターなものを提案するということでしょう。自由に発想して自由にやれるかというと、それは違う。自分の手の中で完結する世界。それを探して、ものづくりの世界に進みたいと考え、ガラスの学校に入ったんです。最初は、「つまらなかったらやめようかな」くらいの気持ちでした。でも、行っているうちに段々と面白くなってきたんです。ガラスってスポーツと同じなんですよね。ほら、スポーツって技術が伴わないことには先に進めないでしょ。それで上手く出来なくて悔しいからまた練習する。その面白さがガラスにもあって、ドンドンとのめり込んでいったんです。
1987年に初めて自分のスタジオを構えました。それから10年経ち、1997年にこの地に構えたのが、『彩グラススタジオ』になります。
『彩グラススタジオ』の概要をお話ください。
ガラス屋として、僕たちの技術が使えるものであれば、基本的にどんなオーダーも受け付けています。例えばシャンデリアが壊れたとしたら、一部をここで作り直すとか、幅広くやらせてもらっている感じですね。時々によって前後しますが、正規と研究生を合わせ、おおよそ10人のスタッフがこの工房で働いています。スタッフは注文の品を作り上げる仕事をこなした上で、別に個人としての作家活動もおこなっています。この世界に入る人はほとんどがガラス作家を目指すわけで、実力を付け、やがて独立していくという流れが一般的です。
他に、プロのガラス作家さんにスタジオをお貸しすることもしています。ご覧の通り、ガラスを作るにはある程度のスペースと設備が必要になります。ちょうどミュージシャンがスタジオを借りてセッションをするのと似ているかもしれません。
吹きガラス教室の中身について教えてください。
趣味の方々、あるいはガラスを今勉強してる最中の学生さんを対象にしています。週に1回が基本で、隔週の講座も設けています。ガラスは、基本が出来てないことには何も作ることが出来ません。ガラスづくりにおけるベースとなる技術。ここでは、それを順番に覚えていってもらいます。吹きの技術は覚えることが膨大なんですが、「これが出来たら次に進もうか」という具合に、ある意味エンドレスに学び続けるという感じになっています。
開始当初から参加されている方も入れば、最近入ってこられた方もいて、平均するとだいたい7、8年というところでしょうか。ここでは、上手い下手は関係なく、ガラスをイチから学びたいという方はどなたでも歓迎しています。
『彩グラススタジオ』では吹きガラスのお教室だけではなく、バーナーワーク等の講座も数種類設けています。それらはとんぼ玉を作ったり、アクセサリー類が主になります。外部から先生をお招きして、皆さんのニーズに応える教室をご用意しています。
体験教室という形もあるとうかがっていますが?
ここには、大手のガラスメーカーの新人研修で来る人もいるんです。ガラスメーカーといえど、ガラスが溶けてる状態を見る機会はそんなになくて、こういった工房でガラスの性質を知ることが肥やしになるんでしょうね。通常の講座意外では、夏休みの自由研究として、一日体験という形で見学に来られる方もずいぶんいます。まるで自分の手でさわるような感覚でガラスを知っていただくのが体験教室の趣旨になります。だいたいの人にとっては初めての経験ですから、非常に面白がって見ていかれますね。
最後にお客様達へメッセージをお願いします。
ガラスというのは、意外に知られてない素材です。ガラスといえば、冷えた状態の製品としてのガラスしか知らないという方がほとんどではないでしょうか。溶けたガラスが水飴細工のように自由に形を変えていく面白さ。これは、例えれば初めてスキーを滑った時の感覚に似ているかもしれません。「なにこれっ、面白い」 あれと一緒なんです。自分がこれまで知らなかった面白い世界の存在を、是非皆さんに体験していただければと思います。
※上記記事は2014.2に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
彩グラススタジオ 伊藤 けんじ 主宰 ITOU KENJI
- 好きな本・愛読書: 自転車雑誌、ビジネス書
- 好きな映画: ヴェルナー・ヘルツォーク監督作品(ニュー・ジャーマン・シネマ)
- 好きな音楽: 印象主義音楽、フリー・ジャズ、プログレッシブ・ロック
- 好きな場所・観光地: 北海道
- 生年月日: 1960年2月14日
- 出身地: 富山県
- 血液型: A型
- 趣味・特技: 自転車、映画